子どもの脳を育てる「言葉がけとかかわり方」 その2

「自己決定できる言葉がけ」について

 ここで言う「自己決定」とは、「自分はこのようにありたいということを自分で決めて行うこと」です。つまり、他人から干渉を受けることなく、自身の意思で決定をくだすということです。子どもの場合、①友人を選ぶこと ②好きなことに興味を持つこと ③自分の身の周りのことは自分ですること ④自分なりの目標を決めて行動すること、などが自己決定です。

何歳になっても「親離れ」できなくて生活を親に依存している人がいますが、これは親がいないと不安で自己決定できない典型的な例です。そうならないようにするには、 小さいころから「自己決定できる言葉がけ」をする必要があります。

では、どういった言葉がけをしたらよいでしょうか?

日頃から「どうしたいの?」「何からしたら一番いい?」と子どもに「質問」することです。これにより子どもは親からの問いかけに答えようとします。答えるために「考える」ようになります。つまり、一つの答えを出すために「よく考えてから答える」ようになっていくのです。よく考えることは「育脳」そのもので、質問や問いかけに対して「コミット」(責任を伴う約束や発信という意味)できるようになるのです。

日本人はこの「コミット」をするということに関して、あまり価値を置いていませんでしたが、グローバル化が進んだ現代社会では、非常に重要な意味を持ちます。「自分の意見を堂々と発言すること」につながるからです。日本人の国民性からすると白黒はっきりするよりも「あいまいな部分」を残しておいた方が良いのでは、と思いがちですが、コミュニケーション(親子間においても)では、自分の意見をはっきり述べるということが大切です。

小さいころから、何かするときは必ず「どうしたいの?」と問いかけることで、次第に自分の意見を言うようになります。結果として、自立心が芽生え、いつも明快な「コミット」ができるようになります。その過程において、自立心が育つようになります。

ところで、なぜ「自己決定」できない子どもになるのか?

その原因はいくつかありますが、分かっていることは3つあります。

1つ目は、子育ての際に「必要以上に過保護、過干渉をすること」です。

「これは危ないからやってはダメよ・・・・」「私がやってあげるから・・・」等、 過保護、過干渉の例を上げればキリがありません。子どもは親の必要以上の過保護、過干渉により、脳が育たなくなり、指示待ち人間になることが分かっています。特に、一人っ子には、どうしても手をかけたくなるので過保護、過干渉になりやすいです。

2つ目は、時間を「急かすこと」です。

「早くやりなさい・・・・」「さっさとやりなさい・・・・」等、つい親が口にしてしまう言葉がたくさんあります。何かをするときに、子どもは子どもなりに考えようとしているのに、親が待ちきれずこれらの言葉が出てしまいます。また、人生の経験値が違うのにも関わらず、あれこれ考えている子どもを見ると、自分と同じようなスピードで意思決定することを求めたり、行動することを求めたりしがちです。こうした言葉をいつも口にしていると、子どもは自分で考えられなくなり、すぐ答えを出すことばかりに意識が向います。つまり、じっくり考えられない子どもになってしまうのです。

3つ目は、「子どもに指示して親の言う通りにさせること」です。

つまり、子どもをコントロールしようとすることです。親は子どもをコントロールしているつもりはないのですが、無意識のうちに自分の言う通りにすればうまくいくと思ってしまいます。こうした心理の背景には、「心配」「愛情」「気遣い」などがあることはわかっているのですが、ついつい勇み足をしてしまうのが親の心情なのです。こうしたことをしていると、子どもは成長のタイミングを失います。言い換えると、自主性や行動力に欠ける子どもになってしまうのです。特に脳がほぼ完成する10歳までに上記の3つをしてしまうと、本来育つべき脳が委縮して、親の顔色をうかがいながら生活する子どもになってしまいます。

このように、「自己決定できる子ども」に育てるためには、日頃から「どうしたいの?」「何から一番先にしたらいいと思う?」などの言葉で問いかけをすることが非常に有効です。これにより自分で考え、自分から行動する子どもに育ちます。

そして、親は子どもに対して、「何かわからないことがあったらいつでも聴いてね」と言うことも大事です。このような言葉をかけることにより、子どもは「最終的に困ったときは、親がサポートしてくれる」との思いを持つようになり、親を心から信頼するようになります。

次に大事なのは、何かをする際には「必ず子どもにコミットさせること」です。

親があれこれ指示したり、命令したりするのではなく、自分の意志で発言させるようにするのです。

それにより子どもは、自分の言葉に責任を持つようになります。また、自分で考えて、自分で意見を言うようになります。今のようなグローバル化社会では、自分の意見をしっかり相手に伝えることはとても重要で、コミュニケーション能力の面から見ても絶対に身につけなければいけないスキルです。

ですから、子どもには、小さい頃から「自分で考え。自分でコミットする(しっかり自分の意見を言う)」ということを当たり前のようにさせることが大切です。

さらに、「子ども中心の応答的かかわり」について説明しましょう。

ここで言う 「応答的かかかわり」とは、「質問されたら答える」ということと、「質問したら答えさせる」という極めてシンプルなことです。一般的にはこのやりとりを「コミュニケーション」と呼んでいますが、これがうまくできていない親子が多いです。

言い換えると、自分の意見を一方的に子どもに伝え、それに対して子どもがどのように感じたのか、どのように思ったのか、などのフィードバックは受け付けないという関係の親子が非常に多いです。これは心理的には子どもを支配することであり、無意識にコントロールしているものです。

親の視点で見れば、幼い子どもに対して、自分が庇護して、なんとか面倒を見てあげようとする心理なのですが、 子育てでは逆効果になってしまう場合もあります。子どもに対しての手助けをどこまでしてあげるべきか、明確な線引きがないために、つい「一線」を超えて、子どもが行うべき領域の中まで踏み込んでしまうのです。

一般的にはこの行為を「おせっかい」と呼んでいますが、子どもから頼まれてもいないのに 勘違いして余計な行為をしてしまう親がたくさんいます。そのため、日常生活の中で、この「応答的かかわり」はとても大切な親子コミュニケーションになるのです。

子育てにおいて、良いかかわり方は、子どもの興味・対象を中心に置いてコミュニケーションをとることです。

つまり、子どもが興味を持っていること、対象としているもの(好きなものや楽しいこと)を日頃の会話の中心に持ってくるのが非常に重要です。これにより子どもは「お母さん(お父さん)は自分の好きなことにも一緒に興味を持ってくれている。嬉しい!」という心理になります。

親が関心を持っている話題で会話するよりも、 子どもが興味・関心を持っている話題で会話するということは、子ども目線で話ができるということですから、子どもにとってこれ以上嬉しいことはありません。さらに、親からの愛情を感じますし、理解されているという安心感も持つようになります。

このことは、親子コミュニケーションにとって、とても大切なポイントになります。こうした蓄積が子どもの感性を高め、 愛情深いやさしい心の持ち主の人間に成長していくきっかけになっていきます。

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