事故は予防できる!
一般的に「事故」は英語で「アクシデント(accident)」と表現されます。この言葉には「避けることができない、運命的なもの」というニュアンスがありますが、医療の世界では最近、事故は「予測し予防することができる」という認識が高まっています。そのため欧米では「事故」を意味する言葉として「インジュリー(injury=傷害)」が使われるようになりました。
正しい知識をもって対策を講じ、子どもの事故を未然に防ぐのは私たち大人の役割です。
死亡事故につながる「窒息」
子どもの死亡事故で4歳までに最も多いのが「窒息」です。0歳児では毎年80%以上を占め第1位です。1~4歳児でも毎年20%前後にのぼります。
子どもが何かを口に入れて急に咳き込んだり、ゼーゼーと音をたてて呼吸したりする時には、飲み込んだものが誤って気管に入った可能性があります。完全に窒息すると、わずか5~6分で亡くなる可能性も。助かっても脳に重い障害を残してしまうため、急いで医療機関を受診するなど、迅速に対応しなければなりません。
「予防」がいのち!
飲んだ異物を取り除く応急処置には、「背部叩打法(1歳以下)」や「ハイムリッヒ法(1歳以上)」があります。ただし、医療従事者でさえ成功率は高くありません。医療機関で、気管支鏡などを用いて異物を除去することになるケースがほとんどです。
家庭で窒息を起こしたら、「対処法はない」と言っても過言ではありません。子どもを誤飲による窒息から守るために、「予防」の大切さを肝に銘じましょう。
こんなもので窒息?
子どもは好奇心旺盛で、何でも口に入れてしまいます。お菓子のパッケージの切れ端など「こんなもので?」と驚くような事例も報告されています。
3~15歳児の最大口径はおよそ39㎜。それより小さい物は誤飲する可能性があります。
身のまわりの物が危険なサイズかどうかを確かめるには、市販の「誤飲防止チェッカー」などが便利です。トイレットペーパーの芯や、大人の親指と人指し指で作った輪のサイズも約39㎜なので目安になります。
4歳児くらいまでで誤飲・窒息の原因になることが多い食物は、ミニトマト、白玉団子、ぶどう、飴やグミ、凍らせたカップゼリーなど。ピーナッツなど豆類もNG。体内で膨張するので窒息しやすくなります。
すぐに始める予防策
誤飲を防ぐための具体策としては、
- 早食い競争の禁止。仰向けの姿勢や歩きながら食べない。
- 食べ物を放り投げて口で受けとめる遊びをしない。
- ミニトマトなど窒息の可能性が高い食物は4分割する。
- 3歳以下の子に豆を食べさせない。豆を置かない。節分の豆まきは袋入りを使う。
- 揺れるクルマや飛行機で、乾いた豆は食べさせない。
- 食事中に笑わせない。大声などで驚かせない。
- 39㎜以下の物を子どもの周りに置かない。1m以上の高い場所に保管する。
大きさ高さなどの数値は、特に重要な対策のポイントです。
知っていますか「STマーク」
おもちゃやその部品を誤飲する事例も多いので注意が必要です。最近、人気のある手作りの歯固めジュエリーやおもちゃも、小さなパーツが外れると誤飲のリスクがあります。市販のおもちゃについては対象年齢を守りましょう。
日本には、赤ちゃんに与える安全なおもちゃの品質基準を示すST(Safety Toy)制度があります。厳しい検査に合格した製品にはSTマークが付いています。マークがない製品=危険というわけではありませんが、おもちゃを選ぶ際に、ぜひ注目してほしいマークです。