子どもの脳を育てる「言葉がけとかかわり方」 その1

近年の脳科学の研究により、子どもの脳の発達の違いが、その後の性格や人格に及ぼす影響が分かってきました。
例えば、脳には8つの「脳番地」(のうばんち)があるそうです。

脳内にある8つの「脳番地」(のうばんち)

つまり、私たちが住んでいる地域の住所のように、それぞれの機能が「区分け」されているということです。
1つ目が『思考系』、2つ目が『感情系』、3つ目が『伝達系』、そして4つ目が『理解系』となります。
さらに5つ目は『運動系』となり、6つ目は『聴覚系』、7つ目は『視覚系』となり、最後の8つ目は『記憶系』となります。

これら 8つは、それぞれ伸びる時期(年齢)があり、伸びる環境(家庭や社会)があるとのことです。

また、脳の発達は①後頭葉から始まり、次に②側頭葉、そして③頭頂葉、最後は④前頭葉という順序で発達していきます。
そして、最終的には10歳ごろに①~④の機能が、ほぼ完成すると言われています。(脳科学では 96%完成すると言われています。残りの 4%、つまり単純記憶だけがあと10年かけて完成していきます。)


たとえば、3歳から 5歳くらいの幼児期 には、8つの「脳番地」の中でも、1つ目の『思考系』や 4つ目の『理解系』は、ほとんど伸びません。この年齢では、これらが伸びる時期ではないからです。


一方で、『運動系』や『視覚系』は、かなり伸びる時期で、成長とともに『勘定系』や『記憶系』の領域も徐々 に伸びてきます。こう考えると年齢に応じた子育て方が必要だということは歴然とした事実になります。ただし、それぞれの領域の伸び方には、“個人差”があることを忘れてはなりません。この差は、言動にも大きく影響してきます。


そのため、同じ年齢でも聞き分けが良い子どもと、聞き分けが悪い子どもも出てくるわけです。結果として、子どもの脳を傷つけないで、脳を順調に育てる(育脳と言います)言葉がけやかかわり方は、子育てにおいてとても重要な要素になります。

子どもの脳を育てる「言葉がけとかかわり方」

子どもの脳を育てる「言葉がけとかかわり方」は全部で4つあります。
1つ目が、「前向きでポジティブな言葉がけ」です。2つ目が「自己決定できる言葉がけ」です。そして、3つ目が「子どもを中心におく応答的かかわり」です。最後の4つ目は、「発達に合わせた言葉がけとかかわり」となります。


まず、1つ目の「前向きでポジティブな言葉がけ」とは、どのようなことなのでしょうか。


これは読んで字のごとく、否定的な言葉やネガティブな言葉は使わないようにして、なるべく前向きでポジティブな言葉を使うようにしましょう、ということです。

言葉は、昔から「言霊」(ことだま)といわれて、その一つ一つには、魂が宿っているとされてきました。そのため言葉というものは、ときに励ましや応援の愛情のエネルギーとなり、ときに暴力的で相手に傷を負わせるような負のエネルギーになることがあります。


ですから、脳がほぼ完成する10歳までは、子どもに対して、できるだけ前向きでポジティブな言葉をかける必要があります。そのため日頃から前向きな言葉、肯定的な言葉、元気になる言葉がけをすることが大切になるわけです。


具体的には、「よくできたね!」「素晴らしいね!」「いつもがんばっているね!」など、結果そのものよりも、そのプロセスを誉めることがポイントです。


例えば、宿題をなかなかしない子どもに対して「早くやりなさい」という言葉よりも「宿題を済ませて遊ぼうね」という言葉の方が、ポジティブな言葉がけになります。子どもの行動や、やり方を否定することなく、認めてあげる方向で接するのが良いとされています。


つまり、その子の可能性に対して、希望を持たせてあげるやり方、接し方です。これは意識しないと難しいですが、子どもの脳の発達のプロセスを理解すれば、おのずと前向きな言葉やポジティブな言葉がけができるようになると思います。


逆に、子どもにとってマイナスになるのは、後ろ向きの言葉(例:「どうせやっても できっこないよ!」「お前には無理!」など)やネガティブな言葉(例:「才能がないんじゃないの・・・」「不器用な子ねぇ」など)、さらに否定的な言葉がけ(例:「また途中であきらめるんだからやめた方がいいよ」「所詮、無駄だよ」など)です。これらを日常的に使っていると、間違いなく子どもの脳に傷がつき、脳が順調に育たなくなります。


特に、 3歳から6歳くらいの子どもの吸収力はピークにありますから、この時期の子育てでこうした言葉を使っていると、確実に子どもは脳にダメージを受けてしまいます。


怖い話ですが、「言葉による脳のダメージ」は、近年の脳科学の発達によって分かってきたのです。
育脳を妨げる次のマイナス行動は、親の都合で「ダメ出し」をすることです。親からしょっちゅう否定の言葉(例:「そんなことをしたらダメでしょう」「それはダメ、これもダメ」 など)を投げかけられている子どもは、すべてのことに否定的になってしまいます。


つまり、成長してからも人の話を素直に聴けない子どもになってしまうのです。そして、自分の行動や判断に自信が持てなくなります。当然、大人になっても人前で堂々と意見を述べる などのことができず、相手のことを批判したり、けなしたりする人間に育ってしまうのです。


「否定」というのは、子どもの可能性の芽を摘んでしまう最悪の行為であり、自分の価値観を子どもに押し付けてしまう親のエゴでもあるのです。


もう一点、育脳を妨げる最悪の行為があります。これが「子どもをコントロールする」ということです。


親から見れば、子どもは確かに自分の子どもですが、親とは別の人格を持った「個人」であることを忘れてはなりません。子どもには子どもの生き方があるのです。

しかし、多くの親はこうした事実を頭ではわかっているのですが、心からわかっていないため、無意識のうちに子どもをコントロールしようとしてしまいます。

「自分の子」という意識が強いため、どうしてもこのような感情が芽生えてしまうのです。特に3歳以降の子どもは、自分の考え方や、やり方をしてきますから、その行動に対して親はついコントロールしようと(良くも悪くも)してしまうのです。


しかし、この行動は子どもの脳の発達面から見ると、かなりマイナスになります。人の成長にとって、肝心要の「自立心」が育たなくなってしまうのです。
子どもの頃に、親から「どう育てられたか?」ということは、一人の人間の人格形成、価値観形成に大きく影響していくのです。

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