醍醐渡辺クリニックは、女性の体のホームドクターとして、思春期から老年期まで女性に寄り添って50余年。
今回は「無痛分娩」についてお答えいたします。
★ ドクター紹介 ★
山口医師
奈良県立医科大学卒。京都府立医科大学付属病院で研修。近江八幡市民病院、公立南丹病院勤務。京都府立医科大学大学院卒。府立与謝の海病院勤務。醍醐渡辺クリニック在勤。(医学博士。生殖医療認定医。産婦人科専門医)
先生から一言:「お困りのことがありましたら気軽に御相談ください。」
趣味:ツーリング(時々)・音楽を聴く
好きな食べ物:ラーメン、カレー、とんかつ、餃子
苦手な食べ物:脂っこいもの
無痛分娩について詳しく教えて下さい
長い在胎期間を経ていよいよ出産となります。分娩経過中、お腹のお子様が苦しんでいないか分娩監視装置を見ながら慎重に経過を見ていきます。陣痛が強くなり分娩が進行してくると子宮口の開大や産道を赤ちゃんが降りてくるので痛みも増してきます。呼吸法で痛みをのがしていくようなラマーズ法や麻酔薬を静脈投与する無痛分娩もありますが、分娩・出産の痛みを和らげる方法の中で最も効果的な方法が硬膜外麻酔だと言われています。「無痛」という言葉を聞くと、麻酔を行うことで「お腹を痛めて産む。」というイメージが無くなる気がしますが、現実は全く痛みがないわけではなく、「痛みが減る。」、すなわち、「減痛」と思っていただくほうが実際的だと思います。硬膜外麻酔法は、区域麻酔法の一種ですので母親は臍から下の感覚が鈍くなりますが意識は保たれています。正しく行えば他の鎮痛法と比較して母体にとって安全な方法であると言われています。赤ちゃんへの影響も、硬膜外麻酔は他の方法よりも少なく、低濃度の局所麻酔薬を用いる現在の方法では神経学的な悪影響は認められないとされています。今回は「硬膜外無痛分娩」についてお話いたします。
一般的な無痛分娩について説明致します。陣痛が始まってから子宮口が3~4㎝に開大したところで硬膜外麻酔を行います。(痛みに耐えられない方の場合、早めに麻酔を行うこともあります。)背骨にある硬膜外腔という場所に局所麻酔を行い、背中から1㎜程度のチューブを留置します。ここから麻酔薬を注入し痛みをブロックします。麻酔薬を注入し数十分経過すると痛みが和らいできます。痛みが軽減し骨盤底の筋肉の緊張もほぐれますので分娩の進行がよくなることが多いのですが、陣痛を弱めてしまうことが多いので陣痛促進剤を投与します。進行具合をみて有効陣痛(分娩を進行させるために適切な陣痛)となるようにします。強すぎる陣痛とならないように気を付けて投与します。薬の効果は個人差がありますので少しずつ投与していきます。低血圧にならないか、麻酔の副作用がないか注意しながら管理します。いよいよ出産に臨む際、麻酔により腹圧が掛けられない場合、吸引分娩やクリステル圧迫法(子宮底を押して児の娩出を助ける。)を用い出産のお手伝いをすることもあります。
無痛分娩は出産日を決めて麻酔をして
出産するのでしょうか?
施設によっては、患者様と入院日を決めて、当日朝から入院の上、硬膜外麻酔挿入、直ちに陣痛誘発を開始する方法をとることもあります。当院では入院日を決める場合もありますが、分娩進行中、患者様本人の希望がでた際に随時、無痛分娩をおこなう方法もとっています。(急に進行した場合、麻酔処置が間に合わなくなることがありますので、希望される方には早めに硬膜外麻酔を用意させていただいています。)
どんな場合、帝王切開になりますか?
硬膜外麻酔を行うことで、痛みが和らぎ、骨盤底の筋肉の緊張も解けてきます。これだけでも分娩が進行し出産に至ることもありますが、麻酔を使うことで陣痛が微弱となることが多いため陣痛促進剤をつかいながら分娩の進行を見守ることが多いです。分娩の進行度により、妊婦さんがいきみにくい場合は、慎重にクリステル圧出や吸引分娩(児頭に吸引カップを当てて牽引する。)などを行うことがあります。帝王切開となる場合は、児頭骨盤不均衡などにより児頭が下降してこないといった分娩停止や産道が硬く子宮口が開いてこないといった軟産道強靱、また、胎児が分娩進行中に何らかのストレスをうけていて、児がしんどくなっている場合(胎児ジストレス)に対するものがあります。また、進行中に子宮内感染を疑わせるような発熱が生じた場合や常位胎盤早期剥離(赤ちゃんが生まれる前に胎盤後血腫ができ子宮内で胎児が血液循環不全に陥る。)が疑われるとき、急激な血圧上昇(高血圧緊張状態)となり脳卒中のリスクが高まるときは帝王切開に移行することがあります。硬膜外無痛分娩を用いても痛みに耐えきれず、やむなく帝王切開を強く希望される場合は御家族と十分な話し合いをしたうえで社会的適応として帝王切開を行うこともありますが、帝王切開もお母さんの体にリスクが全くないわけではないので慎重に施行しています。
今回のお話しはいかがでしたか?
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